息子との久しぶりの外出が決まった。
ずっと会いたかったはずなのに、
その知らせを聞いても、素直には喜べなかった。
うれしくないわけじゃない。
でも、
胸の奥に広がったのは不安のほうだった。
思い出すのは、
うまくいかなかった日のことだった。
また同じようなことが起きたらどうしよう。
ちゃんと過ごせるだろうか。
まだ心の準備ができていなかったのかもしれない。
そして、
また離れる時間がやってくる。
そんなことばかり考えていた。
喜びたいはずなのに、
喜びきれない自分がいた。
外出当日。
長い渡り廊下を歩きながら、
何度も気持ちを落ち着かせようとしていた。
どんな顔で会おう。
何を話そう。
いつも通りでいよう。
そう思えば思うほど、
胸の奥がざわざわした。
会ったときは、
お互い少し照れくさかった。
ぎこちなく言葉を交わしながら、
少しずつ距離を思い出していった。
一緒に過ごせた時間は、
6時間ほどだった。
短い時間だったけれど、
息子の変化を感じる場面がいくつもあった。
私を気遣う言葉。
相手の気持ちを考えていることが伝わる言動。
きっと息子なりに、
たくさん考えてきたんだろうなと思った。
時間はあっという間に過ぎていった。
戻る時間が近づいたころ、
息子が甘えるように近づいてきた。
そして、
私の膝に乗ろうとした。
「もう乗らないよ〜」
そう言って二人で笑った。
それでも息子は、
私の横に座って身体を預けてきた。
ついこの前まで当たり前だったはずなのに、
そのぬくもりが懐かしかった。
大きくなったなと思う気持ちと、
まだこんなふうに甘えてくれるんだという気持ちが、
胸の中で静かに混ざり合った。
うれしかった。
でも少し切なかった。
そして、
どうしようもなく愛おしかった。
泣きそうになったけれど、
気づかれないようにとこらえた。
「あー、あと1時間しかない」
息子がそう言った。
「ほんとだね、早いね」
私はそう返した。
肩を並べながら、
残りの時間を惜しむように過ごした。
離れたくない気持ちは、
きっと同じだった。
帰り道の渡り廊下は、
朝とはまるで違って見えた。
ほっとした気持ち。
寂しい気持ち。
頑張れと応援する気持ち。
そして、
自分を責める気持ち。
どれも本当で、
どれも消すことはできなかった。
家に帰ると、
テーブルの上には息子の飲みかけのコップが残っていた。
さっきまで聞こえていた声はもうなくて、
家の中はいつもより薄暗く、しんとしていた。
寂しさで胸がいっぱいになりながら、
そのコップをそっと洗った。
ほんのすこし前まで、
息子がそこにいた証を流してしまうようで、
少しだけ名残惜しかった。
洗い終えたころには、
少しだけ気持ちが落ち着いていた。
あの日は、
息子にとっても、
私にとっても、
小さな一歩だったのかもしれない。
次はいつかな。
記事を書きながら、
何度もあの日のことを思い出していました。
うれしさも、
寂しさも、
あの日の机の上に、
そっと置いてきた気がします。
次はいつかな。
そんなことを思いながら、
今日も過ごしています。
今日も『さんぽ』にお付き合いいただきありがとうございます🌿

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