決めなければいけないことが、目の前に積み重なっていた。
考えることが多すぎて、正解がどこにも見えなくて、
足元がふわふわして、立っているだけで精一杯だった。
本当は、すべてを抱えたまま立ち続けるのがつらくて、
誰かに任せて、少しだけ逃げてしまいたい気持ちもあった。
自分で選んでいるはずなのに、
自信が持てなくて、
「これでいいの?」という問いばかりが、頭の中を回っていた。
誰も傷つけたくなかった。
自分も、これ以上傷つきたくなかった。
だから私は、感情をしまい込んだ。
それは、最近始まったことじゃなくて、
ずっと前から、そうやって生きてきた結果だった。
揺れてしまえば、前に進めなくなりそうで、
感じることよりも、耐えることを選んだ。
「正しいこと」を
「しなければいけないこと」と割り切って、
「これは私の責任だから」と何度も言い聞かせ、
心にふたをするようにしていた。
そうしないと、前に進めない気がしていた。
それまで感じないようにしてきた心が、
最近になって、少しずつ動き出して、
いろんな不安を感じるようになり、
息子のことでお世話になっている先生に、今の気持ちを話した。
不安であること。
決断できない弱さ。
自信がなくなってしまったこと。
返ってきた言葉は、意外なものだった。
「いままで、辛いことがありすぎて
心が感じないようにしてきたんだと思います。
だから、いま感じている気持ちは、正常ですよ」
「もっと、自分を大事にしていい」
その場では、
正直、よくわからなかった。
うなずくだけで、精一杯だった。
受け取った言葉は、心のどこかに置いたまま、
まだ、意味を持たないままだった。
頭では聞いていたけれど、
心には、まだ届いていなかった。
でも、次の日。
朝の静けさの中で、ふとその言葉が浮かんだ。
――私、いままで
いくつの壁を越えてきただろう。
何度も行き止まりに立って、
暗闇に転げ落ちて、
それでも、ちいさな光を探して歩いてきた。
希望を見つけたと思ったら、
幻みたいに消えてしまって、
それでもまた、遠くに光を見つけて、
必死に前に進んできた。
気づいたら、
乗り越えられなかった壁なんて、ひとつもなかった。
「そっか。
わたしなら、できる、大丈夫!」
そう思えた瞬間、
心の中に、ふっと風が吹いた。
目の前に広がっていた、重たい雲が、
サーッと流れていって、
その向こうに、青い空が見えた。
ああ、覚悟ができたんだ、と思った。
あとから、気づいた。
あの迷いは、弱さじゃなかった。
弱くなったわけじゃなかった。
壊れてしまったわけでもなかった。
ただ、
長いあいだ凍りついていた心に、
ほんの少し光が差し込んで、
大きな氷山の端が、かすかに溶けはじめただけだった。
音を立てるほどでもない、
たった一滴の雫が落ちるくらい。
それでも、
すべては、そこからはじまった。
光は、私にとって道しるべ。
進む方向を教えてくれるもの。
立ち返ってもいい場所。
自信になって、
生きている感覚を思い出させてくれるもの。
私は、まだやれる。
諦めなくていい。
怖さが消えたわけじゃない。
迷いがゼロになったわけでもない。
それでも、
大切な人の未来を思いながら、
自分の足で選んでいく覚悟は、ここにある。
心に風が吹いた日。
私はまた、歩き出した。
ゆっくりでも、
ちゃんと、自分の歩幅で。
今日も、ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
心に吹いた小さな風は、
すぐに何かを変えてくれるものではないけれど、
立ち止まっていた足先に、
そっと進む方向を教えてくれることがあります。
焦らなくても、強くならなくてもいい。
ほんの一滴から、すべては始まっていくのだと、
この日、私は教えてもらいました。
今日も『さんぽ』にお付き合いいただきありがとうございます🌿

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