朝晩の風が急に冷たくなって、
気づけば、体も心も少し疲れていたのかもしれません。
腰を痛めて寝込んでしまってから、一週間。
寝返りも打てず、
続く痛みに静かに耐える日々でした。
「早く治さなきゃ」と焦る気持ちとは裏腹に、
階段も上がれなくて、
気持ちまで沈んでいくようで。
仕事をして、家のことまでしてくれる夫の姿に
感謝の思いがあふれるのに、
何もできない自分が少し情けなく感じていました。
そんなある日、
窓から入る風にのって、
ふわりと金木犀の香りが届いたんです。
そのやさしい香りに背中を押されるようにして、
「少しだけ外に出たい」と夫にお願いしました。
ゆっくりと腕を借りながら歩き出すと、
近くのお庭から
オレンジ色の花が顔をのぞかせていました。
いつも通っていた道なのに、
こんなに近くに咲いていたなんて。
緑の葉のかげに
こぼれるように咲く小さな花。
まだ蕾も多かったけれど、
やわらかな香りが心に染みていきました。
青い空に映えるオレンジ色がかわいくて、
見上げている間だけは
痛みのことをすっかり忘れていました。
動けない日々の中で、
当たり前のように過ぎていた時間が
どれほど尊く、
やさしいものだったのかに気づきました。
「早く治して、また散歩しようね」
そんなふうに話しながら帰った、
たった五分の小さなさんぽ。
でもね、
その五分の中に、
季節の香りと、
大切なぬくもりが詰まっていました。
小さな香りに導かれて、
心までそっと、秋に染まっていきました。
季節の変わり目は、
体も心も少し立ち止まりたくなるものですね。
思うように動けない時間の中にも、
小さな幸せや、
誰かの優しさがそっと咲いていることに気づかされました。
読んでくださったあなたにも、
今日という日に、やわらかな香りが届きますように。
今日も『さんぽ』にお付き合いいただきありがとうございます🌿
▶ “夫婦の時間”を描いたこちらの記事もどうぞ。
お湯を注ぐたびに、思い出すこと

コメント